ニヒル

2006年3月2日 日常
初めて精神科の門を叩いたのは、高校2年生の時であった。

14歳の頃から過食嘔吐を繰り返していたが、すぐに治まるとか

その内やらなくなるだろう等と楽観的に考えていた。


しかし、それは甘い考えであった。


毎日毎日私の行為は異常なものとして家族に責められた。

食べ物を隠されたり激しく叱責されたり等したが、もう自分では

コントロール不可能なものとなっていた。そして毎日そんな

情けない自分を責め、腕をカッターで切るようになっていた。




そうして高校1年生の終わり、春休みだったと思うが無茶苦茶に

食べ物を胃に詰め込んで嘔吐しようと思ったが、喉に違和感が

あった。そのまま嘔吐したら、便器が血で真っ赤に染まった。

何処かを傷つけて血を吐いてしまったのである。その頃にはもう

自分のやっている行為は病気であると色々調べて確信していた

ので、タウン○ージで胃腸科と精神科がある病院を調べて母と

一緒に行った。それでも母はまだ精神科に抵抗があった様で、

『渋々』という感じが窺われた。




最初、胃腸科で事の顛末を話し、胃カメラを飲んだ。胃自体に

傷は無く、どうやら胃の入り口、喉の奥の方を嘔吐した時に

傷付けた様であった。そしてその胃腸科の先生に精神科へと

連れて行かれた。

精神科の診察で、やっとはっきり「摂食障害という病気です」と

診断され、不安時にソラナックスという抗不安剤を処方された。

其処には高校3年生の初めまで通ったが、受験を控えていた為

欠席時数を増やす訳にもいかないので行くのを止めてしまった。

暫くは1日数回の過食嘔吐に落ち着いていたが、妹が非行に

走った心理的負担が重なり大学に合格した頃には更に酷くなって

しまった。しかし表面上は何も無い振りを装い、ただ過食嘔吐が

酷くなっていく自分を傍観している感じであった。




そして間が開いて大学の健康診断でこころの相談に申し込み

臨床心理士のカウンセリング(この先生には今もみてもらって

いる。)と通っている大学の付属病院の精神科医にお薬を処方

してもらうようになった。其処で少し誤診があり、私は当時の

分裂症とされていてそのお薬を沢山飲んでいた。

「100人に1人が罹る病気」とも言われていた。勿論そんな

お薬をたくさん服用していたのであるから、頭は1日中ぼぉっと

していて、勉強も手につかない。ノートを取ろうと思っても

副作用で手が震えてまともに文字が書けない状態になった。


そしてその頃から全てが虚しく思えた。


そんな経緯があり、大学2回生の終わり恋人に突然の別れを

告げられてもう自分は生きている必要は無いと手元にあった

向精神薬や睡眠薬を100錠近く何も考えず白ワインで飲んだ。

そして昏睡状態に陥り私が通っている大学の付属病院へ運ばれ

胃洗浄を受け入院した。そこからより酷い虚無感に襲われる様に

なった。




何も未来に期待できない。絶望しかない。全てが真っ暗闇で

生きている事自体が苦痛である。またそこから湧いてくる苛々で

毎日リストカットをしていた時期もある。けれどもうつ病に

なってからはそれをする力さえ無くなってしまった。



自分の周りの空気は虚無で彩られ、心の中は自分の至らなさ、

阿保さ加減、下らなさで破裂しそうになっている。

それを抑えてくれるのはやはり『お薬』である。




しかし、お薬を服用すると無感動になる。限りなく生温い泥沼に

浸かっている様で「何もかもどうでもいい」ような感じになる。




抑うつ状態にあると余計そのニヒリスティックな考えが酷くなる

のであるが、テレビのドキュメンタリーで【死】を扱うもの、

胸がぎゅっとなるものが流れると、とめどなく涙が溢れる時も

ある。虚無でいる間は何にも感じられないのに、突然どこかの

スイッチがオンになった様に涙が溢れ出てしまう。




本当に自分の状態が全くといって良い程掴めなくなる。




しかし、私の根底にあるのは子どもの頃からある虚無だと思う。

特に今日はそれが酷く、お薬によって落ち着いていたものの

ニヒリスティックな考えが心を支配して無感動であった。

それはまるで、自分の感情がどこかへいってしまったようで、

少し離れた所から自分を傍観しているような離人感に襲われた。




うつ病に因って見た目は虚無的で何も考えてないように見えるが

心の中は自分の事を責めたり、自分と向き合いすぎて狂いそうに

なったりしているのである。でも、直ぐ冷めて全ては虚無だと

感じる。




今日は空腹で昼過ぎに目が覚めたが、何も食べずに済んだ。でも

またこれから過食嘔吐は待ち受けている。うつ状態で苦しいのに

無理矢理胃に食べ物を詰め込む行為。それらを全て吐く行為。

もう虚しいとしか言い様が無い・・・・・・。

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